230Tommy's絵画美術館 今月(8月)の作品「ぶらんこの絶好のチャンス」  

ぶらんこの絶好のチャンス  
Hasards heureux de l'escarpolette 
1767
年頃83×65cm
油彩画布 ウォーレス・コレクション
London
ジャン・オノレ・フラゴナール Jean Honoré Fragonard 
1732-1806 |
フランス  ロココ美術

ブランコといえばビリーバンバンの白いブランコを思い出すが 映画やテレビの
世界では黒沢明の「生きる」や増村保造の「暖流」映画・TVでは深夜

公園で一人でブランコに座っている若い女性あるいは中年男性は、
寂しい人を象徴するシーンでよく使われる。韓国ではブランコはクネ(그네)と言い
旧暦の5月5日に行われる韓国の端午では、女性がブランコに乗る
(クネティギ、그네뛰기)と言う風習がある。
絵画の中でロココ美術で表現された「ブランコを紹介しよう!
 
18世紀のロココ美術盛期から末期を代表するフランスの画家
ジャン・オノレ・フラゴナール」
高い技量磐石な基礎を感じさせる的確な描写技法や構図構成を駆使し、様々な
ジャンルの作品を手がける。特に不道徳性の中に甘美性や官能性を感じさせる
独自の風俗的主題や
寓意的主題を扱った作品は画家の天武の才能が発揮され
速筆としても知られ、その一瞬を捉える卓越した技術で描かれる
肖像画、風景画、
風俗画などの作品は、当時の日常生活と感受性を余すことなく伝えている。
1732
年、南フランスのカ
ンヌ近郊グラース(グラッス)で皮手袋製造業を
営む一家の息子として生を受け1738
年、家族と共にパリに出てその後

シャルダンフランソワ・ブーシェカルル・ヴァン・ローに師事。
その努力が実り 1752年ローマ賞を受賞、1756年か
ら1761年までの
5年間イタリアへ留学し、風景画家のロベール
や美術愛好家であった

サン=ノン師と交遊する。帰国後
貴族や財界の有力者との交流を持ち、
個人の邸宅の装飾画の注文などで寓意的主題や官能的主題を描き好評を博した。

また1773年フラゴナールのパトロンであったベルジュレと共に再び
ドイツ・イタリアを訪れている。

1789年から始まったフランス革命後は、劇的な社会情勢の変化や、それに伴う
急速なロココ美術の衰退などもあり、
それまでの隆盛を極めた活動とは
対極的な恵まれない制作活動を送った後、人々から忘れられ1806
年、
パリで没した。

18世紀フランスに始まったロココ美術における様式後期を代表するジ
ャン・オノレ・フラゴナールの最も知られる傑作『ぶらんこの絶好のチャンス
(ブランコ)』。サン=ジュリマン男爵がフラゴナールの友人で同時代の画家
ドワイヤンに依頼するも、ドワイヤンからフラゴナールへと注文が廻された
ことによってフラゴナールが制作した本作に描かれるのは、美しい森の中で
ぶらんこに乗る若い娘と、それを押す中年の男、そして若い娘のスカートの
中を覗く若い男の姿である。愛や女性(本作では若い娘)の象徴である薔薇が
咲く園でスカートの中を覗く若い男は若い娘に好意を寄せているのであろう、
左手には脱いだ帽子を手にしている。この脱がれた帽子と若い娘の足から
脱げる靴には道徳や宗教的教義から開放された性的な意味が含まれている
(ぶらんこの浮遊感もそれを意味するとの説もある)。
また若い男の頭上には口元に指を立てるキューピッド(エロス)の石像が、
少女の背後(下部)には驚き戸惑う二体のキューピッド(エロス)の石像が
描かれている。一方、ぶらんこを操る男には中年の男が描かれており、
当初は依頼主の要望で司教が描かれる予定であったが、画家は(おそらく
若い娘の夫として)中年の男に変更して描いた。このようなやや軽薄で
不道徳ではあるが、優雅かつ軽やかなロココ様式の中に、自由な恋愛を
謳歌する当時の男女の世界観の表現した作品は画家の真骨頂であり、
中でも本作はその最たる作品として知られている。また登場人物によって
三角形が形成される安定的な構図や画面構築(中央の石像も三角形である)、
木々の間から射し込むスポット的な陽光の表現と深い深緑による陰影の描写、
美麗で華やかな色彩表現など一枚の絵画としての完成度も非常に高い本作は、
当時から版画に刷られ世間に出回るほど好評を得た。

ぶらんこに乗り、靴が脱げる若い娘。この若い娘の足から脱げる靴と、
若い男の脱がれた帽子には道徳宗教的教義から開

放された性的な意味が含まれている(ぶらんこの浮遊感もそれを意味すると
の説もある)

【ぶらんこに乗り、靴が脱げる若い娘】
スカートの中を覗き笑みがこぼれる若い男。愛や女性(本作では若い娘)の
象徴である薔薇が咲く園でスカートの中を覗く若い男は若い娘に好意を
寄せているのであろう、左手には脱いだ帽子を手にしている。

   【スカートを覗き笑みがこぼれる若い男】
ブランコを押す中年の男。当初は依頼主の要望でぶらんこを押す男には
司教の姿が描かれる予定であったが、フラゴナールは(おそらく若い
娘の夫として)中年の男に変更して描いたことが知られている。

  【ブランコを押す中年の男】
口元に指を立てるキューピッド(エロス)の石像。
このようなやや軽薄で不道徳ではあるが、優雅かつ軽やかなロココ様

式の中に、自由な恋愛を謳歌する当時の男女の世界観の表現した作品は
画家の真骨頂であり、中でも本作はその最たる作
品として知られている。