227.Tommy’s絵画美術館紹介作品 ジョン・エヴァレット・ミレイ屈指の代表作『オフィーリア』

ジョン・エヴァレット・ミレイ屈指の代表作『オフィーリア』

(Ophelia) 1851-52年 76.2×111.8cm | 油彩・画布
| テート・ギャラリー(ロンドン)

幾多数えられるラファエル前派の絵画の中でも、傑作中の傑作として
知られるジョン・エヴァレット・ミレイ屈指の代表作『オフィーリア』。
本作に描かれるのは世界で最も著名な劇作家のひとり(英国出身の )
ウィリアム・シェイクスピアが手がけた四大悲劇≪ハムレット≫
第4幕7章の一場面である。 本場面は、デンマーク王子ハムレットが、
父を毒殺して母と結婚した 叔父に復讐を誓うものの、その思索的な性格
のためになかなか決行できず、 その間に恋人オフィーリアを狂死に
追いやってしまう(オフィーリアは小川で 溺死してしまう)という内容で、
ラファエル前派の画家やヴィクトリア朝の画家たちは 同画題の作品を数多く
制作している。ミレイもそれに則り本作を手がけたのであるが、 後に同じ
ラファエル前派の画家ロセッティの妻となったエリザベス・シッダルを
モデルに、細密な写実描写で表現される死(又は死の直前の)オフィーリアの
姿は、 生と死の狭間にあってなお神々しいまでの美しさに満ちている。
また本作の背景はサリー州ユーエルに程近いホッグスミル川の風景を元にして
描かれているが、自然主義的な美的理念に基づき本背景の中に描写される
草花には象徴的な意味が込められている(ヤナギは見捨てられた愛、
イラクサは苦悩、ヒナギクは無垢、パンジーは愛の虚しさ、首飾りのスミレは
誠実・純潔・夭折、ケシの花は死を意味している)。
なお画家の強い要望に よりモデルを務めたエリザベス・シッダルは湯の
張られたバスタブの中でポーズを 取り続けた為に、ある日、風邪を拗らせて
しまい、モデルの父親から治療費の 支払いを請求されたという逸話も
残されている。
生と死の狭間にあってなお 神々しいまでの美しさに満ちているオフィーリアの姿。
本作に描かれるのは 世界で最も著名な劇作家のひとり(英国出身の)ウィリアム・
シェイクスピアが 手がけた四大悲劇≪ハムレット≫第4幕7章の一場面である。
【神々しいまでに美しいオフィーリアの姿】 溺死したオフィーリアの力無い手。
後に同じラファエル前派の画家ロセッティの妻となったエリザベス・シッダルを
モデルに、細密な写実描写で表現される死した(又は死の直前の)オフィーリアの
姿は、生と死の狭間にあってなお神々しいまでの美しさに満ちている。

【溺死したオフィーリアの力無い手】
小川の水面に揺らめく花々。自然主義的な美的理念に基づき本背景の中に描写
されるヤナギは見捨てられた愛、 イラクサは苦悩、ヒナギクは無垢、パンジーは
愛の虚しさ、首飾りのスミレは誠実・純潔・夭折、ケシの花は死を意味している。

 
【小川の水面に揺らめく花々】
ミレイの最も有名な絵であるだけく、「ラファエル前派」を代表する作品でもある
オフィーリアは、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』に登場する悲劇の ヒロイン。
狂気を装うハムレットに捨てられ、父親を殺されたオフィーリアは 悲嘆のあまり
気が狂い、川に落ちて死んでしまいます。舞台ではこのオフィーリアの 死のシーンは
なく、王妃ガートルードのセリフの中で語られるのみですが、 19世紀には
オフィーリアは美術作品の題材として人気があり、数々の画家たちが 想像力を
駆使して魅力的な作品を描きました。 あまりに写実的で緻密な自然描写が見事です
が、ミレイはこの作品を描くに 当たって、1851年7月から11月ににかけて、
ロンドンの南西のサリー州 ユーウェルという町に滞在し、ボックズミル川沿いで
朝から日没まで写生を したそうです。数ヶ月に渡って写生をしたために、絵の中
には異なる季節の 花が混在しているとか。そのひとつひとつの植物にはそれぞれ
意味が込め られていて、オフィーリアの人格や運命を象徴しています。
この絵は最初に背景が描かれ、後にアトリエで人物が加えられたそうですが、
オフィーリアのモデルとなったのは、エリザベス・シダルという女性。
帽子店で働いている時に画家ウォルター・デヴァレルに見い出されてモデルを
務めるようになったそうですが、病弱そうなはかなげな雰囲気から
ラファエル前派の画家たちのミューズ的な存在だったそうです。
この「オフィーリア」のモデルをした時は真冬でしたが、お湯がたっぷり入った
浴槽で長時間ポーズを取らされたそうです。
制作に熱中したミレイは浴槽の 下のお湯を温めるランプが途中で消えたことに
気がつかず、 そのままポーズを 取り続けたエリザベスはひどい風邪を
ひいてしまったとか。  
彼女はその後、ラファエル前派のロセッティの専属モデルとなり、彼と結婚。
ロセッティの手ほどきで自ら絵画や詩の制作もしたそうですが、33歳で
他界してしまったそうです。 ミレイの「オフィーリア」は、明治期の日本の
作家や画家にも影響を与えた ことにも注目です。まず、ロンドンに留学中だった
文豪・夏目漱石はミレイの 「オフィーリア」を見て感銘を受けたようで、
小説『草枕』の中で温泉宿に逗留中の主人公の画家の言葉をかりてこの作品に
ついて述べています。  
また、日本画家の鏑木清方は、『金色夜叉』で貫一が夢に見るお宮の死の 場面を
描くのに、ミレイのこの作品を参考にしたそうです。

絵に込められた花言葉
①スミレ:誠実・純潔・若い死 ②ケシ:死 ③ヒナギク:無邪気 
④ナデシコの一種:悲しみ ⑤パンジー:物思い・かなわぬ愛 
⑥柳:見捨てられた愛、愛の悲しみ ⑦ノバラ:喜びと苦悩 
⑧ミソハギ:純真な愛情・愛の悲しみ⑨忘れな草:私を忘れないで 
⑩キンポウゲ科の花:子どもらしさ ⑪バラ :愛