絵画の旅「ルーヴル美術館のムリリョ」
ルーヴル美術館のムリリョ
Bartolome Esteban Murillo (1617-82)
スルバラン、ベラスケスがリアリズムの頂点を極めたあとに続く、
17世紀セビーリャの巨匠。ラファエロの甘美さ、ルーベンスの
豊穣さをあわせ持ち、スルバランを追い越す勢いで、民衆の
圧倒的人気を得た。
スペインの巨匠には、ベラスケスやゴヤ、ピカソなどたくさんの有名な画家が
いますが、私が好きなのはセビリヤで生まれ育ったムリリョを紹介します!
MURILLO,Bartolome Esteban
彼の絵画を最初に見たのは、マドリッドのプラド美術館にあった「受胎告知」
です。 ルーヴル美術館にもイタリア絵画のギャルリーを過ぎたところに
スペイン 絵画のギャルリーがあって、そこにはいつかのムリリョの絵画が
展示され ています。
ムリリョは長い間、ヨーロッパの画家の巨匠として仲間に加えられ た唯一の
スペイン画家でした。彼は生存中から賞賛され、ついであらゆる 収集家の的と
なり、多くの画家たちから賛辞を受けました。
その名声は、ルーヴルでは、1869年に美術館のギャルリーのためにムリリョの
胸像を注文したくらいです。ルーヴルでの彼の多数の収蔵品からその重要性と
多様性を理解することができます。 厳しい節度がスペイン絵画の特徴であった
ような時代に、タッチに 比類のない甘味さをみせる彼の芸術は、同時代の画家
たちにとって、霊感源と なる完全な手本となりました。
実際、ディエゴ・デ・ベラスケス(1599-1660)やフランシスコ・デ・スルバン
(1598-1664)のような画家が、故国や愛好家の枠を超えて評価されるのは、
19世紀末まで待たなければならないのですが 1660年代からムリリョの作品は
静かさと甘味さへと向かい、その時代から 彼の全作品の特徴となりました。
マドリードでの短期間の滞在のさいに、 王室コレクションで研究することが
できた巨匠たちの作品が、彼の色づかいと タッチを変えていっそう豊かさを
もたらしました。 彼のすべての作品を通して見られる宗教感情は、それまでの
スペイン絵画が 表現してきたものとは非常に異なった形で現れてきます。
彼が生まれたのは スペインのセビリヤの町で、そのために彼の生涯のほとんど
の仕事はセビリヤで 行われたと言ってもよいでしょう。
ルーヴル美術館にある「聖母の誕生」(上の写真)は、セビリヤ大聖堂の聖
パウロ礼拝堂のために1660年に描かれましたが、マリアのエピソードである
と同時に家族の 親密な場面でもあります。明暗表現は透明感のあるタッチで
和らげられ、産湯につけられた幼子の周りの活気が、人間的な暖かみを
添えています。 1665年にサンタ・マリア・ラ・ブランカ聖堂のために
描かれた「6人の人物が いる無原罪のお宿りの出現」は、当時建設された
この新しい聖堂を飾るために注文されました。
ルーヴルの収蔵品は、1855年にナポレオン3世によって 寄贈された
無原罪のお宿りをテーマにした小さなエスキースがあります。
「聖家族」、通称「セビリヤの聖母」は、一般に1665~70年に描かれたと
考えられていますが、ムリリョの作品で非常に高く評価された瑞々しい甘味さを
完全に表現しています。
ルーヴルの彼の全絵画作品のなかで、最も流麗で 優雅な作品であり、
磔刑を予告する細い十字架を差し出す 洗礼者ヨハネがこの地上の幸福を
弱めているにしても、その幸福感は最も満ち 足りたものとなっています。
※ルーブル美術館資料、及びセ―ヴィル工場19世紀のステンドグラスから抜粋。