NO.80.中世の学問の総本山として名を馳せた修道院『ザンクト・ガレン修道院』


中世の学問の総本山として名を馳せた『ザンクト・ガレン修道院』
スイスは日本の九州とほぼ同じ大きさの小国でありながら、世界遺産も数多く自然遺産が2カ所、文化遺産が4カ所登録されています。
 
その文化遺産のひとつ、「ザンクト・ガレン修道院」はスイス北東部の東スイス地方にあり北はドイツ、東はオーストリアとリヒテンシュタインに接し、美しい自然や豊かな文化が残るザンクトガレンにチューリヒから列車で出発。約1時間で到着。駅からは歩いても10分程度。以前、EUROCENTRESのガーバー会長からスイスへ招待を受けたとき一度訪ね感銘を受けた場所を再度訪問する。

ザンクト・ガレンの町は、中世の面影を今も色濃く残している。
町の始まりは、アイルランドの修道士であるガルスが612年、小さな庵を作ったことに端を発する。この庵を中心に町は発展し、ザンクト・ガレンという町の名は聖ガルスに由来。後に、この庵が「ザンクト・ガレン修道院」となり、彼が持っていた経典を求めて人々が集まるようになり、中世には学問の総本山としてその名がヨーロッパに広がった。
修道院は旧市街の南にある。2本の塔が印象的な建物は18世紀の半ばに改築されたもので、スイスの代表的な後期のバロック様式である。金箔がふんだんに使われた祭壇、天上いっぱいに描かれた装飾画など、内部の豪華さは目を奪われるほどだ。特になんともいえない寺院内部の薄緑青色の装飾はなんとも言えず現在ではこの色は出せないらしい。
付属の図書館も見逃せない。入り口にはギリシャ語で「プシヒス・イアトゥリオン」という文字が書かれている。これは蕫魂の病院﨟という意味で、当時は教養がないことは心の病と考えられ、図書館はその病を癒す場所であった。

建物はみごとなバロック様式であり、ホールはスイスで最も美しいと評されるロココ様式。修道院と同時期に同じ芸術家が手がけたもので、寄木造りの床や美しい細工が施された柱など建築的にもみどころが多い。
膨大、かつ貴重な蔵書も忘れることはできない。重厚な本棚に天上までびっしりと詰め込まれている蔵書は、10万冊以上。なかでも、2000冊を超える中世の写本、1650冊にも及ぶグーデンベルク時代の印刷本などは貴重なコレクションだ。修道士たちが書き写した写本は、神学だけでなく医学、天文学にも及び、ラテン語をドイツ語に翻訳した「ザンクト・ガレン写本」によって、欧州学問は飛躍的に発展した。
この歴史ある修道院は1805年に修道院としての機能はなくなったが、図書館は今も開館している。修道院はスイスを代表するバロック建築の教会という目に見える部分だけでなく、この修道院がヨーロッパの歴史に与えた影響力が評価され、図書館とともに1983年、「ザンクト・ガレン修道院」はユネスコの世界文化遺産に登録された。
日曜日だったので街は静かでゆっくり観光が出来チューリヒからの日帰り観光にはお薦めである。